2019.04.05

熱中する子ども達の姿がまぶしい! 「YouTuber Academy」 (FULMA株式会社)

<本サービスのポイント>
・YouTube動画配信の実践を通じて、本当に役立つ「ネットリテラシー」が身につく
・「ITスキル」だけでなく、「企画力」「発想力」「プレゼンテーション力」も伸ばせる
・「親子で動画編集・配信を始める」など、「家族のコミュニケーション」が活性化する

最近のスマートフォンや動画アプリの普及と共に、「子どもとネット」の関係は切っても切れないものになっています。そんな「子どもとネット」の関わりに不安を感じていたり、日頃の子どもとのコミュニケーション不足を感じておられる保護者も多いのではないでしょうか? そこで今回ご紹介したいのは、FULMA株式会社が運営する「YouTuber Academy」です。これは動画配信サービス「YouTube」で自分たちが撮影・編集した動画を公開する「YouTuber」に憧れる子ども達が、ネットリテラシー(ネットを使う際に注意すべき事項)や動画撮影・編集テクニックを学ぶためのいわば学校のようなもの。Youtuberという職業を通じて発想力、企画力、提案力、実行力を養うアクティブ・ラーニングであり、作成された動画はFULMAが管理するYouTubeチャンネルに原則限定公開でアップロードされます。2017年のスタート時は単発のワークショップ形式でしたが、2018年には全国5カ所で定期的に開催されるスクール形式に、2019年4月からは全国15カ所にまで拡大される予定です。パパスマイル編集部は「YouTuber Academy」を運営するFULMA株式会社のCOO中條武さん(以下、敬称略)に取材を行い、サービスの概要や今後の展開について伺いました。

(お話を伺ったのは)
FULMA株式会社 COO
中條 武 さん



子どもたちの「学ぶ姿勢」がまったく違う、「YouTuber Academy」

編集部:「YouTuber Academy」で、子ども達はどんなことを学んでいるのでしょうか?

中條:「YouTuber Academy」の対象は「小学校1年生〜6年生まで」の子ども達ですが、そこで私たちが学んで欲しいことは大きく分けて4つあります。「動画撮影・編集のテクニック」はもちろんですが、私たちが最も力を入れているのは「ネットリテラシー(インターネットを使う際に注意すべきこと)」の部分です。それから「企画力・発想力」と「プレゼンテーション力」を身につけてもらうことも重視しています。自分が話している動画を振り返り、より伝わりやすくする方法を考える「メタ的な視点」を持って欲しい、と思いながらカリキュラムを作っています。また、スクールの進め方ですが、だいたい「ネットリテラシーの講義→課題に基づく企画の立案→撮影・編集→動画を発表」というサイクルを3ヶ月で1回実施します。ですから年間で4本の動画を作ることになります。たとえば、この3ヶ月は「スライムを使った動画」を作ってみよう、次の3ヶ月は「おもちゃを紹介する動画」を作ってみよう、という流れですね。最初はネットリテラシーを学ぶなどインプットの時間が長いのですが、1年の後半になるにつれてアウトプットの時間が増えていきます。

編集部:使用されているテキストの内容を拝見すると、大人も学ぶべきレベルですね。

中條:テキストは総務省が公表している資料や、IT各社様の資料も参考にさせていただいています。それらの資料はだいたい中高生向けなので小学生向けに修正し、かつYouTuberという動画配信の切り口で、わかりやすく伝えることを考えて作ってきました。たとえば「肖像権」という概念を伝えるためには、「公園で動画を撮っている時に『自分以外の人』が写ってしまったら、どうすれば良いか」という具体的なシチュエーションを元に教えるというようなことをしています。

編集部:写真を拝見すると、授業中の子ども達の食いつき方がすごいですね。身を乗り出して、イキイキと学んでいるのがわかります。

中條:ネットリテラシーについては難しい内容も多いのですが、動画製作をこの後にするとわかっている子ども達は、そのような知識も必要な知識と考え、まさに「前のめり」で学んでくれているように思います。そして私たちが「ネットリテラシー」について教える時に気をつけている点は、「ネットを使いこなす」という意識です。従来のネットリテラシー教育は「なるべくネットを使わせない」「フィルタリング(アクセス制限)をする」という方向性に偏っていました。しかし、これからの世代にとって「ネットから切り離す」という教育はナンセンスであり、むしろ危険やリスクをきちんと学んだ上で、「どのようにネットを使いこなし、自分の武器にできるか」を考えさせる方が大切だと思います。このような観点は学校教育も追いついていないようで、動画製作は抜きにした「ネットリテラシー」だけの出張講座を小学校からご依頼いただくこともあります。

子ども達が本当に夢中になっているもの……それは「YouTuber」だった

編集部: 「YouTuber Academy」は、いつ頃スタートされたのでしょうか?

中條:2017年3月からで、この年は「YouTuber Academy」を単発のイベントとしてワークショップ形式で行なっていました。そして2018年からは首都圏に5つの教室を用意し、いわゆる「習い事」として定期的に通っていただくスタイルを始めています。授業時間は1回あたり「1時間の教室」と「2時間の教室」があり、それぞれ年間40回と20回の開催になります。

編集部:年間40回となると、ほぼ毎週のようなイメージですね。

中條:「学童保育」のカリキュラムとしてやらせていただくタイプの教室はほぼ毎週、平日に開催しています。その中にはインターナショナルスクールもあり、動画制作も英語で教えています。

編集部:それは講師の方がすごいですね。

中條:「YouTuber Academy」の講師は全員FULMAのメンバーで、関東6名・関西2名の構成です。先ほどのインターナショナルスクールの授業は、英語のできるメンバーが対応しています。私たちは教室を所有せず、学童保育施設をはじめとする「教室を持っている事業者様の設備」で「YouTuber Academy」を開催しており、施設管理のために常駐する必要がありません。おかげでこの少人数でも運営できています。また、これまでFULMAのメンバーは全員が大学生でしたが、今年3月に私と代表を含む3人のメンバーが卒業して事業に投下できる時間が増えます。ですから2019年から教室数を拡大するのは、ちょうど良いタイミングだと考えています。

編集部:「YouTuber Academy」を始められたきっかけを伺えますか?

中條:2016年7月にFULMA株式会社が設立された当初の事業内容は、子ども達に「自然体験」や「陶芸体験」などを届けることでした。会社として掲げた「子どもたちの『やりたい!』をカタチに」という理念に沿った事業だったのですが、同じような体験を提供する会社は多い上、「子ども達が本当にやりたいこと」をできていないのではないか……というギャップに直面したのです。そこから色々と検討を始め、子ども達が安全に動画制作を学び、体験できる場として「YouTuber Academy」を2017年3月にスタートしました。

編集部:子ども達が本当にやりたいのは「自然体験」や「陶芸体験」ではなかった、と。

中條:実際に子ども達の声を聞くと、「YouTuber」の人気をひしひしと感じましたし、きちんと動画の制作や編集を学べる場がないことも社会を見れば一目瞭然だったのです。それどころか、当時は子どもたちの「やってみたい」という気持ちをネガティブに捉える風潮が一般的でした。だから私たちは、子ども達がネットに触れる危険を管理しながら安全に楽しく動画を制作できる場所を作ろうと、「YouTuber Academy」を始めたのです。

「YouTuber Academy」を通じて、たくましく成長する子ども達

編集部: ここに通う子ども達には、どんな変化が見られるのでしょうか?

中條: 私たちが子ども達に望んでいるのは、動画撮影や編集の技術を身につけることよりも、「自己肯定感」「自己効力感」を伸ばして欲しいということです。これは当社の理念でもあるのですが、子どもの時にやりたいことを応援されたり、自分の力で何かをやったという経験は子どもにとって大きな自信となり、さらにその自信が次のチャレンジにつながり、将来の支えになると考えています。そういう中で、「YouTuber Academyに通っていた子どもが今まで引っ込み思案だったのに、小学校の応援団長に立候補して見事にやり遂げた」という報告をある保護者の方にいただいたのは嬉しかったです。まさに自分がやりたいと思ったことを表明し、それをやり切るということを「YouTuber Academy」で学んでくれたのかな、と思いました。他にも、「学校の授業で積極的に発言するようになった」というお話はよく伺います。

「コミュニケーション下手な父親」と子どもが、一緒に動画制作を始める!

編集部: 保護者からの感想は他にありますか?

中條: 「YouTuber Academy」に通う子ども達は、すぐに保護者より動画撮影や編集が上手になります。すると、特に父親に多いのですが、「俺だってできる」ということで動画撮影や編集を勉強し始めて、親子で一緒に動画を撮影・編集するケースは多いですね。実際、夏休みの家族旅行の動画を親子で編集し、それを見せていただいたこともありました。また動画の撮影・編集は「日曜大工」の新しい形になりうると考えています。「親子で一緒に何かを作る」という点で、通じる部分があるのではないでしょうか。

編集部: 今後の御社の展開について教えていただけますか?

中條:今は「YouTuber Academy」の教室を、より全国に広げていきたいと考えています。また、「動画制作」以外にも「子ども達がやりたいのにできていないこと」はたくさんあると思いますので、それをサポートする場を順次「新しいサービス」として作っていきたいと考えています。たとえば「eスポーツ」は数年前の「YouTuber」に近いと見ており、検討しているところです。

取材を終えて

数年前に「親が子どもになって欲しくない職業・第1位」として「YouTuber」が選ばれ、同時に「子どもがなりたい職業・第3位」に「YouTuber」がなったのは記憶に新しいところです。しかし、子ども達が「やりたいことを、思う存分やること」を通じて、さまざまな事柄を自ら学び成長していく場としては、これほど優れた環境は少ないと感じました。これからの「ネット社会」で必要な知識をまったく学ばない方が危険性は高くなりますし、子どものやる気と自信を育てる機会を親世代の常識・感覚で奪うべきではないでしょう。「YouTuber Academy」には体験コースも用意されていますから、気になる方は是非、実際に確かめてみてください。

YouTuber Academy 公式ホームページ
https://youtuber-academy.jp/

著者紹介

関 和幸

千葉県在住のフリーライター。不動産情報サイト「マイナビ賃貸」、横浜・湘南エリアの街情報サイト「はまれぽ.com」などでコラムを連載中。得意な取材分野は「不動産」「法律」「医療」「農業」など。インタビューによる自分史製作会社「わたしの物語」を主宰している。

わたしの物語
http://my-stories.jp/
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